ゲーマー回顧録

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キャッチコピーに偽り無し、伝説のシューティングゲーム【Hellsinker.】

今回はHellsinker.というシューティングゲームについて書いて行きたい。

store.steampowered.com

 

Hellsinker.とは?

steamのストアページの説明文を引用すると、

多くのクリエイターに影響を与えた伝説のSTGが、進化してSteamに登場。ゲームシステム、ビジュアル、物語、そして音楽のすべてが一つの思想のもと高次元に融合したSTGの到達形!

 

仕様

  • 進行状況により、内容や構成が大きく変化する8+EXステージ。
  • 3+αの、使い方が大きく異なり、多彩な特徴を備えた自機。
  • リプレイとボス戦再戦機能。
  • 40トラック以上の劇中音楽。
  • 3系統のスコア要素。使用キャラクターごとの個別ランキング。
  • 戦略的スタイルとして設計された最大ライフ数増減/被弾ガード要素。
  • 工夫と習熟で頻度が大きく変化するライフエクステンド
  • オリジナル版から拡張された情報表示オプション。
  • ゲームの基本操作をわかりやすく習得できるチュートリアル

とある。何のために記事を書いているのだと言われそうだが、この説明の通りであるとしか言いようがない。記事タイトルにもあるように、このキャッチコピーには一切誇張表現というものが無く、ゲームシステム、ビジュアル、物語、そして音楽の全てが圧倒的な完成度を誇る伝説のSTGである。伝説などと仰々しい表現ではあるが、実際にプレイすればその意味を理解できるはず。

と、これでは説明にならないのでもう少し詳細に書くと、ひらにょん氏という一人の開発者だけで製作され2007年に発売された同人STGで、2019年にsteamで配信が開始された。とは言え、とても15年前の作品とは思えない。特徴的なのが普通のシューティングゲームと呼ぶには特殊過ぎる機体の数々、それらを形作る複雑だが密接に絡み合ったシステム、そして合間合間に挟まれる独特なノベル形式のストーリー、ゲームの展開に完全に同期したBGM。どう考えても尖った要素しかなく、これをただのシューティングゲームと呼んでいいのかすら怪しく、一歩間違えれば何がなんだかわからない物になりそうな雰囲気に見えるが、これらが見事に高次元に融合しているというのだからすさまじい作品である。

jp.ign.comこのIGNの記事が詳しく、だいたい言いたい事は書かれているのだが、それでもあえて自分なりにそれらの要素がどのようなものか書いて行きたい。

 

複雑だがそれぞれが意味を成している機体とシステム

シューティングゲームと言えば、弾を撃って避け、危険な場面ではボムで敵弾を消し、後はサブウェポンがあるかないかぐらいが一般的だろう。しかし、このHellsinker.においては操作体系こそ大きく変わらないものの、性能としてそんな普通の機体はまず無い(一応ゲーム進行で解放される機体の中にまあまあ普通のシューティングっぽい機体もある)。一番初心者にお勧めとされるMINOGAMEという機体のメインとなる攻撃手段は無的時間を活用した体当たりである辺りから察して欲しいのだが、それぞれの機体が全く異なる独特の性能とシステムを持つ。通常のショット、ショット長押し、サブウェポン、サブウェポン長押し、ディスチャージ(ボムの事をこう呼ぶ)とその長押しに加えてこれらの同時押しと、多数のコマンドから繰り出される攻撃を場面に応じて、リソースに応じて考えながら使っていく様は、シューティングゲームでありながらアクションゲームのようですらある。攻撃面のみならず、後述する防御面も独特のシステムを持つ事から、ただのシューティングゲームかと問われればイエスとは言い難い。そしてこれらの性能が機体毎に違う為、単一の機体のやり込みのみならず、色々な機体での攻略を目指すリプレイ性も非常に高い。これらの機体がどう面白いのか、初期3機体についてざっくりと解説する。

DEAD LIAR

死線を幾度も潜り抜け、死にすら嘘をつくとの異名が既にかっこいい。一応初期カーソルが合わせられていてシナリオもこの機体でのみ流れる場所があるので主人公ポジションではある。しかし、真っ当な機体が一つもないこのゲームでは主人公ですら特殊。主力となるのがショット溜めからなる中距離斬撃の単発高火力攻撃。適切な場所に撃ち込んで厄介な敵を一瞬で落としたり、ヒットアンドアウェイを繰り返したり。サブウェポンはミステルトゥというオプションを任意地点に展開しピンポイント攻撃を行うもの。斬撃と合わせ、攻撃範囲は狭いが任意地点への火力が高く、狙撃するかのようなプレイングがメインとなる。なお、斬撃は一定時間溜め続ける事でボスすらワンパンするレベルのロマン火力を出せる。

FOSSIL MAIDEN

全機体の中で最多の武装を持ち、場面に合わせた使い分けを考えるのが楽しい。シンプルな直線攻撃のショット、サブウェポン展開で一定範囲への持続攻撃、前後短距離に伸びるビームランス、高速な弾消しショット、ディスチャージは攻撃だけでなく単純な無的時間のみを発生させたりと出来る事が多い。出来る事が多いという事は上手く使わなければ器用貧乏になるという事でもあるのだが…。

MINOGAME

最も無的時間を確保出来る代わりに、それらが通常ショットとのトレードオフになっているため絶妙な取り扱いを要求される。基本はサブウェポンで短時間無的になれるフィールドを発生させ、その中へ自身は溜めショットによる自機周辺への狭い範囲攻撃で突撃する。サブウェポンはゲージ量やコマンドで性能が変わる為、上記の無的フィールドだけを出せば良いというものでもなく、そこのトレードオフの関係をどうするかが肝となる。独特な性能ながら展開できる無的時間の長さゆえに初心者向けとされるなんとも特殊な機体である。

 

と、ざっくりした説明だが、ここまで特徴的な機体が揃ったシューティングゲームというのはまず無いだろう。

機体の紹介はここまでにして、更にこのゲームの特徴とも言える防御面についても触れたい。なぜ防御面?と思うかもしれないが、ただ弾を避けるだけがこのゲームではないからである。

弾を受けとめ消すサプレッションレディアス

メインショットを撃たなかったり溜め状態を維持すると、機体周辺にサプレッションレディアスという名のバリアフィールドを展開する(のだが、実はこれも機体によって発動条件や性質が異なる)。これに触れた弾は減速し、維持すると消える。これを使う事で高速かつ大量に飛んでくる弾をいなしていくのである。もちろん消せなかったりするものもあるので、ケースバイケースな部分はあるが。これの面白い所はただ避けるだけではない防御手段を提供すると共に、その操作方法にある。メインショットを溜める事が発動条件である事から、一部機体ではそれが攻撃の予備動作となる(上記で紹介した例で言えばDEAD LIARの斬撃、MINOGAMEの体当たり)のである。すなわち攻防一体。Hellsinker.では、このようにシステム間が密接に絡み合い、それでいて絶妙なバランスを成している部分が多々ある。前述の攻撃手段についても実はSOL、LUNAというメインショットの威力と連射速度というパラメータ、更にはサブウェポンゲージ、これらがそれぞれトレードオフのリソースとして関連付けられている。

ただのボムではないディスチャージ

一般的なシューティングでは弾消しの手段としてボムかそれに準ずるものが用意されているが、本作ではディスチャージと呼ばれるものが存在している。これはSOLという時間チャージされるメインショットの威力に繋がるゲージを一定量消費する事で発動する。使用回数に制限は無く、なおかつ火力も高いため積極的に使う事が求められるのが特徴的である。これも機体毎の性能差が微妙に有り、メインショットの威力にも影響したり、ゲージ量によって威力や持続が違ったりする事から、最初はアドリブで、そして慣れてくるといつどう撃つのか考えるようになるという具合に機体やステージ、プレイヤーに応じた戦略的な使い方が出来る。

リスクリターンの駆け引きとなるSEAL

一部的に接近する事でSEALという弾を撃てなくする状態を付与できる。これも攻略のテクニックとして必須なのだが、的に近づく都合上少なくないリスクを背負う。しかし、前述のサプレッションと組み合わせる事である程度リスクを下げて的の攻撃を防げるという訳である。もちろん防げない弾を出してくる場合もあるので注意は要るのだが。どれをSEALするのか、SEALなど考えずに倒すのを優先にするのか、他の攻撃防御の手段と合わせて、攻防一体の戦術を考えてプレイする事になる。

 

ここまで操作に関連するシステム面について触れてきたが、それ以外の部分についても触れておきたい。

ボーナスじゃないボーナスステージ、決別の霊廟

”星を見た、等と言えば笑われるだろう。”という謎の文章から始まるボーナスステージ、決別の霊廟が用意されている。これはパラメータの一つであるTERRAが0になると唐突に突入し、そのTERRAはステージ進行、ミスやエクステンド用アイテムの取りこぼしによって減少する。つまり、ゲームが終わりに近づけば近づく程このステージは容易に発生する。そしてこのステージではミスはしない代わりに成績に応じてスコアとエクステンドアイテムが大量に手に入る。加えて、このステージ突破後はコンティニュー不可かつ一回のみ。これらがどういう事か説明すると、単純にミスばかりしているとこのステージに入ってエクステンドをして残りのステージを攻略するが、コンティニューはもう出来ない(ちなみに通しコンティニューは一度だけ)。ミスをせずに来れば終盤ステージに向けて残機を大量に増やした状態で突入出来る。プレイヤーの技量に応じて、残機が減りに減った状況や難所の手前でこのステージに突入し、残機を回収してその後に挑めるようになるという訳である。スコアアタックとして見れば最終局面で出したくなるため、そういった意味でもこれをどこで出せるようになるかが肝になるのだ。なお、ボーナスステージとは称しているものの、中身は強烈なボスラッシュであり、どこがボーナスステージなんだ?となるのがオチである。

攻略しやすいSHORT MISSION、練習しやすいSEGMENT SELECT、リプレイ機能

ゲームを一定ラインまで進めると、SHORT MISSONという面セレクト型で一部をスキップして通しプレイが出来るようになる。これのお陰で超難所を無視して進めるので、単純な攻略として楽になる。そもそも通しで8面以上、1時間以上のボリュームなので、集中力を保ち続ける厳しさへの緩和にもなっている。
また、一度クリアした、あるいは何回か到達したSEGMENT(面)は任意で選んでプレイ出来るので、難所の練習やボスだけの攻略が出来る。それだけでなくリプレイ機能も完備されているので、ストーリーをしっかり見たい、自分や的の動きをしっかり見たい際には大変便利。

 

総じて、システムも機体も様々な要素があるのだが、それでいてそれらに無駄がなく攻略には全てを使う必要があり、なおかつ見事に関連付けられている。レベルデザインもプレイヤーの成長に合わせたプレイが出来るようになっている。この複雑でありながら成立しているシステムを使いこなす楽しさがHellsinker.の伝説の要素の一つであると言える。

 

独特な世界観、ストーリーとそれらを補強するテキスト達

シューティングゲームと言えば一騎当千の背景を持つ事が多い事から、なかなかぶっ飛んだ設定の世界観を見る。本作はそういった物とはベクトルの違う、過去の栄光への執着、寂寥、哀愁、因縁、祈り…そういったテーマとなっている…と思う。なぜ”と思う”なのかと言えば、ゲーム内で語られる物語の解釈が難しいからである。DEADLIARでのゲーム進行中に挟まれる会話、ステージの合間に唐突に挟まれるノベル、そして”ラスボス”と称される概要と手引きという名のマニュアル。これらの情報を組み合わせて物語を紐解いていくのだが、非常に独特な言語スタイルによってこれらは表現されており、それが何を意味するのか正確に把握できたかと言えば素直にはうなずけない。それでも、それらから得られた情報やゲームの演出から導き出したテーマが上述したものという訳である。最初にリンクを張ったIGNの記事にあるように、メタな考察も含めるのがかなり納得のいく解釈でもあり、非常に感動するメッセージでもある。

シューティングゲームという枠に囚われない表現方法、そしてそれをゲームプレイを通じて伝えるスタイルがHellsinker.の伝説の要素の一つである。

 

演出、完全に同期したBGMが魅せる総合芸術

ゲームの演出とはなんだろうか?ビジュアル、BGM、ゲームプレイング、シナリオ、それらの組み合わせこそがゲームの演出だと筆者は考えており、特に総合芸術と呼ばれる所以もここにあると思っている。Hellsinkerはこの部分において、steam紹介文で”STGの到達形”と呼ぶように、自分が見てきた中ではインディーゲームはおろかメジャーを含めて考えてもなかなか類を見ないほどの完成度を誇っていると思う(というよりここまで演出が極まったタイトルがあったら教えて欲しい)。
ネタバレになるのでどこまで書くか悩ましい所である。シューティングゲームというストーリーテリングそのものをメインにしたゲームでもないにも関わらず、ネタバレというワードが出て来るぐらいに熱のこもった場面が多数ある。シューティングという固定進行の場面がほとんどのゲームにおいて、BGMとプレイングの同期は非常に大きい。それぞれがステージ専用曲なのはもちろんの事、ステージ局面の変化に応じた転調、ステージBGMの引きの旋律に合わせて鳴り響くWARNING、そしてイントロからボスの出現や攻撃に合わせたかのような曲の展開。ゲーム進行に合わせて変化するメニュー画面にBGM。そのどれもが印象深い。
極めつけはラスボスなのだが、これは本当に自分の目で確かめて見て欲しい。IGNの記事で若干触れられてはいるのだが、ボスの攻撃やそれに応じたプレイング、ストーリーとしての展開、それらに合わせたBGMと全ての演出が極まっている。初めてクリアした際は余りにも感情が揺さぶられ、まさかシューティングのラストで涙が出るとは思わなかった。
筆者のお気に入りをいくつか挙げようかとも思ったのだが、やはり初見の印象を大事にして欲しい気持ちの方が強い。

ゲームにおける全ての要素が見事に絡み合い、素晴らしい演出を成している、それがHellsinker.の伝説の要素の一つである。

 

最後に

出会ったのは去年のサマーセールで、どう設定を変更してもインタラクティブリコメンドのトップに居座っていたのがきっかけである。筆者はそこまでシューティングをプレイするタイプでは無いのだが、調べて入ってくる情報の濃さにプレイを決心した所、すさまじい刺さり方をした。
難易度的にも頑張ればクリア出来るぐらいでどうにもならないという事は無いと思うので(特に弾幕STGの類をプレイしない筆者でもクリア出来た)、シューティングだからと敬遠せずに、究極のSTGをプレイして見て欲しい。なぜ伝説と呼ばれるのかきっと分かるはず。とにかくプレイして、自分自身で経験して欲しいとしか言えないのが苦しいが、ボリュームや得られる経験からは考えられない程お値段もお手頃なので少しでも興味を持ったら触れて欲しい。

なお、攻略については

ヘルシンカー(Hellsinker.)私的マニュアル 転載版

犬丼帝国 RUMINANT'S WHIMPER総合 Wiki - atwiki(アットウィキ)

この二つの解説及びWiki、あとは先人たちの個人ブログなどが参考になる。詰まったら確認して欲しい。