ゲーマー回顧録

雑食ゲーマーが色々語る

最先なり最後なり【ゼノギアス20thコンサートの感想】

始めに断りを入れておく。今回のゼノギアスコンサートの感想を書くにあたり筆者の語彙力は圧倒的に足りない。どれくらい足りないかと言うとシタン先生に対するリコの素早さぐらいには足りない。それでも、いちファンとしての感想をまとめたい。

 

開場前から始まっていた

筆者は8日の昼公演に参戦した。グッズ先行販売があるとの事で先行販売開始直後には現地入りしたのだが、朝から物凄い人の数、行列。それもそのはず、グッズの先行販売に加えて撮影可能な数々の展示品ブースもあったからである。

1時間弱並んだ結果お目当てのパンフレットを無事購入でき、その後流れるように展示品ブースへ向かったのだが、撮影可能というだけあってなかなか列が進まず、全てを見る事が出来たのはギリギリの時間であった。展示されていたものは、田中氏の20周年書き下ろし色紙、フェイ、エリィ、ヴェルトールのフィギュア(多分新作)、作中アニメーションのセル画、各キャラクターの立ち絵やラフ画、そしてソフィアの肖像画(ちゃんと?書きかけ)とどれもファンならばじっくり眺めたくなるものばかり。

展示品ブースを待つ間パンフレットを読んでいたのだが、これがもう永久保存版と言える程の物。ハードカバー製本のしっかりしたもので、I am Alpha…の言葉から始まり、ゼノギアスの物語の解説、キャラクターの立ち絵などの資料、光田氏や開発関係者へのインタビュー、コンサートのセットリストや各曲の歌詞など盛り沢山の内容で、コンサートが始まる前からもうお腹いっぱいであった。前述した展示品のラフ画なども田中氏へのインタビューの部分に差し込まれており、じっくり見る事が出来る。

並んでいる最中に驚いたのはその幅広い客層である。男女問わず、中年から若者まで本当に幅広い人達が居て、とても20年前のゲームコンサートとは思えないような光景であった。

 

音楽によるゲームの追体験

作品に引き込まれる前半~DISC1~

今回のコンサートはまるでゼノギアスを再びプレイするかの如く、ゲーム内で聞く順番と同様のセットリストとなっていた。

まずはOP曲である冥き黎明。原作でも突然のフルアニメーションから始まり、プレイヤーを一気に引き込んでくれるが、コンサートではその更に上を行っていた。背景のスクリーンに映し出されるOP映像に合わせ演奏が始まり、曲、OPの展開に合わせて照明が目まぐるしく切り替わる。なかなか言葉で説明するのは難しいが、OP映像内でのエマージェンシーに合わせて赤い照明に切り替わったり、終盤の朝焼けに合わせて淡いオレンジに切り替わり…といった具合である。この照明による演出はこの曲に限らず凄いもので、曲によっては一瞬の盛り上がりの部分(語彙力不足)に合わせて切り替えが行われたりと、前日放送での演出にもこだわっているという発言の意味が深く感じられた。照明に加えて、ステージ中央からのスモークがエルドリッジ墜落に合わせて炊かれ、そこからミァンが現れるかのようにANUNAが登場。まるでゲームのような演出がステージ上でも行われていた。オーケストラによる演奏もそうだが、ANUNAのコーラスも素晴らしいものであった。OPにおける異質さというべきか、神々しさというべきか、あの独特の雰囲気が見事なまでに伝わってきた。

その後もゲームを追うように海と炎の絆、おらが村は世界一…と続いていき、そして風の生まれる谷~遠い約束とのメドレー。遠い約束はゲーム内でも重要で、筆者もとても好きな曲なのだが、ピアノソロの美しい旋律、あの映像、更にはミラーボールを用いてゲームを再現するかのような照明演出。早くも涙腺が危うい事に。

鋼の巨人、死の舞踏といった戦闘曲は面白い演出が。ループ毎にメインとなる楽器が切り替わり、同じ曲でありながら違う雰囲気を楽しむことが出来た。

地味に嬉しかったのはグラーフ闇の覇者がセットリスト入りしていた事である。正直な所、コンサート向きではないと思っていたので選ばれないだろうと考えていたが、かっこいいギターにより原曲の良さを失うことなく素晴らしい曲となっていた。

盗めない宝石はANUNAのコーラスがメイン。パンフレットに男女それぞれのソリストによってフェイとエリィをイメージした構成になっているとあったのだが、歌詞も含めてまさしくその通りに表現されていると感じた。

その後やさしい風がうたうを挟んだ後、再びANUNAのコーラスによる傷もてるわれら光のなかを進まん。ゼノブレイド2でもアーケディアで近い物を聴いていたが、やはり生での賛美歌はその荘厳さにただただ圧倒されるばかりであった。

エンディングへと向かう後半

その後休憩を挟んでからの悔恨と安らぎの檻にて。こちらはANUNAのアカペラによるもので、筆者の音楽の良さを表現する語彙の少なさを後悔するほどの素晴らしさであった。

紅蓮の騎士はぜひ生で聞きたいと思っていた曲の一つで、期待を遥かに超えていった。通信音声のような音声をどうするのか気になっていたが演奏に合わせそのまま流していたようである。

神無月の人魚、風が呼ぶ蒼穹のシェバトとフィールド曲が続き、そして飛翔~翼のメドレー。飛翔の演奏開始と共にマリアが父親に立ち向かうあのシーンが流れ出し、なんとかこらえていた涙腺も崩壊。心なしか演奏側も全体的にボリュームが上がっていたように感じた。印象的だったのはギターで、文字通り暴れるかのようにかき鳴らしていたのが後方の席からでもよく見えた。感極まっていたのは筆者だけではなかったようで、周囲でも鼻をすする音が聞こえだしたのはこの辺りであった。

静寂のオルゴール~DISC2~

ゲームもコンサートもいよいよ終盤。予感の重く、どこか神秘的な雰囲気から覚醒~神に牙むくもののメドレー。そして最先と最後。ここでもANUNAのコーラスがとてもいいピースとしてはまっていた。

最後を飾るは言うまでもなく、ジョアンヌホッグのSMALL TWO OF PIECES~軋んだ欠片~。その澄んだ歌声にもう感動したとしか言いようがない。歌詞の一部が変わっていて、but just you and I can find the answer~の部分でjust がなくなっていて、can ではなく shallであったり、最後のループではwe can run~でcanではなくwillとなっていたり、その歌詞の変更からはまるで観客へのメッセージのように感じられた。

アンコールではStars Of Tears、Balto~Lahanのメドレー。曲に合わせた観客の手拍子と光田氏の演奏者紹介。会場は最高に盛り上がっていたと思う。最終的には観客総立ちのスタンディングオベーション

演奏も終わり、演奏者達が袖へはけて行き、最後に残ったのは光田氏。おもむろに席から箱のような物を取り出し、ネジを巻くと中央の椅子に置いてステージから去って行った。流れ出したのは遠い約束のオルゴール。そしてそのオルゴールだけを照らし出す照明。筆者含め全ての観客が立ったままその音色に聴き入っていた。

 

音楽が呼び覚ますもの

今回のコンサートはゲームの音楽を聴くという以上に、1つの作品として感じられた。音楽だけでなく、映像やステージ演出も含めて1つである。最後のオルゴールが静かに流れた時はまさにゲームをクリアしてエンドテロップが出ている時のような寂しさというべきか、あの不思議な感覚が感じられた。ゲームの内容に沿ったセットリストというのも相まってなおである。本当に最高の時間を過ごす事が出来た。

悲しい事に人の記憶は脆いもので、いつの日か今日の事を鮮明には思い出せなくなっているかもしれない。しかし、またゼノギアスの曲を聴けばこの記憶がきっと浮かんで来るような気がしている。

思い出の品として、ソラリスシート特典のオルゴール。劇中のフェイのように、いつかこのオルゴールを聴いて今日の事を思い出す日が来るだろうか。

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 箱の横にはキムからエメラダへのメッセージも。

 

ゼノギアスはゼノの名を冠する続編は出ているものの、直接のシリーズとしては1作のみである。それも20年前のゲームである。それがこうして20周年記念コンサートとして開かれ、運良くチケットを手に入れられ、楽しむ事が出来たのだから何とも不思議な感覚である。まさしく最先なり、最後なり。

 

そして何より、素晴らしい音楽を、このような機会を提供してくれた光田氏、そして関係者各位に感謝したい。